35階から落ちてきた恋
アリーナ
「今日は水曜日ですよねぇ」
「そう、まだ水曜日ね」
「今日は何時まで働けばいいんでしょうか」
「うーん…」

まだインフルエンザは猛威を振るっているし、そのほかノロウイルス、風邪などとにかくクリニックには患者さんが溢れていた。

みんな連日の残業に耐えていたけれど、今朝ついに事務スタッフの1人がインフルエンザでダウンしてしまった。

このままではナースもマズいかも。

「みんなもう上がってくださ~い。後は私が残まーす」

あと数人になり、私は居残りを申し出て疲労がたまるナース達に帰宅を促した。

「えー、いいですよ。私も残りますよ」

遠慮するナーススタッフに「共倒れになると困るから」と強引に背中を押して上がってもらう。

お子さんがいるナースもいる。私は適当にコンビニで夕飯を買ってお風呂に入って寝るだけでもいいけど、家庭がある人はそういうわけにはいかないだろう。
家事もあるだろうし、お子さんの世話だって…。

こういう時はみんなで乗り切らないと。

最後の患者さんの点滴を抜いたのが21時だった。

「少し楽になりました。ありがとうございます」と家族に支えられて帰宅する中年男性を見送り、ほっと息を吐く。

少しでも楽になってよかった。

「水沢さん、お疲れさま。車で送るよ」

一足先に事務スタッフも帰しているから、残りは先生と私だけ。

「ありがとうございます」

先生の自宅はクリニックから離れた場所にあり、私のアパートも通り道だから、今夜はありがたく乗せてもらっちゃおう。
今日もむくんだ足が重いし、さすがにもう疲れた。
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