役員用の会議室は窓がない。


紺色のカーペットが広がる床の上に会議室のテーブルと椅子、部屋の奥にプロジェクターがあるだけで扉を閉めれば完全な密室だ。


この密室の中で本日、胡桃沢 和奏(くるみさわ わかな)は決心した。


今がチャンス!…と。


「いつも綺麗にしていただき、ありがとうございます」


会議室を掃除している最中にお礼を言っているのにも関わらず、表情を一切変えないポーカーフェイスな彼、相良 大貴(さがら だいき)が現れた。


眼鏡の奥には切れ長の瞳、鼻筋の通ったクールなイケメンと言う見かけだが、中身は堅物で融通が効かないらしいと噂の彼なのに私はときめいてしまうのだ。


相良さんは副社長専属秘書をしていて、会議室を掃除していると時々、覗きに来る。


「当然の事です。それより…」


仕事以外の会話はあまりした事もなく、高鳴る心臓を右手で押さえつつ、勇気を出して問いかける。


「相良さんは彼女居ますか?」


恥ずかしいので、若干、早口になりながらも言い切った。


我ながらよく勇気を出して頑張ったと自画自賛もする間もなく、返答は瞬間的に自分に戻ってきた。


「業務以外のプライベートの事は答える義務はないはずです」


こうなったらどうにでもなれと言う投げやりな感じで、気持ちをぶつけた。


「す、好きです!相良さんの事!」


「業務中ですので、お答え出来ません。失礼致します」


突然の告白にも驚きもせず、一礼して会議室を去ってしまった。


………玉砕。


完全なる敗北。

この作品のキーワード
オフィスラブ  クール  眼鏡  溺愛  ピアノ  大人の恋  冷酷  秘書  溺甘