社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
『これだけで良いの?』と聞かれても、返答に困る。


何も言わずに相良さんの胸に顔をうずめて、目を閉じると心臓の音が耳に入る。


離れたくないな、ずっとこうして相良さんを近くに感じていたい。


「…おやすみ、和奏」


「おやすみなさい」


幸せな気分のままで居たいから、シャワーを浴びたら早めに寝よう。


会社付近の公園で抱き着いてしまった時は、すぐにベリッと音が聞こえるぐらいに勢い良く引き離されたが今日はプライベートだからか、くっついたままだ。


明日も仕事だから早く解放しなきゃいけないのに、いざとなると背中に回した腕を解けない。


「…帰れないんだけど」


「わわっ、ご、ごめんなさいっ」


相良さんの申し出により腕を緩めたが、今度は唇を絡め取られて、部屋に吐息が漏れる。


「今度こそ、おやすみ」


「…っ、おやすみなさい…。自宅に着いたらメールして下さいね」


「分かった」と言い残し、相良さんは玄関の扉を開けると振り返らずに外に出て、扉をそっと閉めた。


相良さんの居なくなった部屋にテレビの音だけが響き、画面の時間を見るともうすぐ23時になろうとしていた。


明日から仕事なのに遅くまで引き止めてしまっていた私。


相良さんが自宅に着く頃にはもう、午前0時を回るかもしれないな…。


そう言えば、住んでいる場所も聞いてなかった。


翌々考えたら、誕生日も何にも知らない。


次回会う時迄には、聞きたい事を箇条書きしておこう。


───自宅に着いた時、約束通りにメールをくれた相良さんだったが、シャワーを浴びてベッドでメールを待っている内に私は寝ていたらしく、気付いたのは次の日の朝。


焦りはしたが、朝起きて直ぐに返信をしたら、数分後には返信が来て、幸せなスタートを切れた朝だった…。
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