【短】泣き虫先生とわたしの卒業
図書室で二人


 ***


 少し肌寒くなってきた図書室。日が傾いてきて、もう沈んでしまいそうだった。


 暖房設備などここにはないし、あったとしても勝手に使うことは許されない。


 こんな寒い図書室とも、もうお別れ。
 何もかもに思い出があって、この場所は今やわたしを泣かせるためにあるようなもの。


 僅かに見えている桜が切なげに揺れていて、わたしの感情もつられて寂しくなる。


 もう、帰らなければならない。


 家ではきっと両親が待っているだろうし、スマホにも通知が溜まっているかもしれない。


 友達と卒業旅行の計画もまだ中途半端で、明日には決めて動かなければ、すぐに大学の準備に追われてしまう。


 やることがたくさん。
< 23 / 41 >

この作品をシェア

pagetop