蜜月同棲~24時間独占されています~


「よろしくお願いします」


個室で暫くふたりきりだ。
どちらも淡々とした声と言葉で、仕事は静かに進む。


商品は薔薇のボディクリームで、ダマスクローズオイルがたっぷり使用されている。
ピンク色の可愛らしいボトルは、上部の金色のキャップが薔薇の花を象られていて、可愛らしさも残しつつも豪奢なイメージだった。


小物のリボンやシフォンの布、バラの造花などで商品を演出し、暫くはシャッター音がだけが響いていた。
薔薇のボディクリームなんて華やかな商品画像を、こんな鬱々とした気詰まりな空気で撮るようなこと、いつもなら絶対ない。


商品の演出って、やっぱり気分が大事だったりする。
可愛い女の子をイメージするものは、やっぱり幸せな気分で撮影したいもので。


今の私たちは対極に位置している。


「柚香」


新田さんが、カメラを構えたまま、ぼそっと、小さな声で私を呼んだ。
その声が、仕事とは無関係なことを話したがっているように感じて私は返事をしなかったのに、彼は構わず続けた。


「ごめんな」


その謝罪を、私はどう受け取ればいいのだろうか。


いいよ、って、笑って許して「お幸せに」って言って欲しいのだろうか。



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