それでも、幸運の女神は微笑む

「何も、わからないのですね」

『ラギア、その、何があったのか聞いてもいい?』


おずおずと切り出せば、歩く速さは緩めずにラギアは淡々と答えた。


〈不正してるの知ってるよって言った〉

『不正?』

〈そう〉



短く答えて、ラギアはあるドアの前で足を止めた。

キラキラ光る金でできたドアノブの白いドア。


「入って」

ドアを開けて、ラギアは私を招き入れる。

『お邪魔します』

豪華そうな部屋だとドキドキしながら入って、驚いた。




『ここ、ラギアの寝室・・・なんだよね?』



綺麗に整えられた大きなベッドが奥の方にデンと鎮座している他には何もない、だだっ広いだけの白い空間。


これは、寝室というんだろうか?

ベッドしかない、まるでとても綺麗な物置部屋みたいだ。


こんな寝室でくつろげるようには思えないけど・・・。




〈ここは、俺の寝室〉

『にしては、生活感ないね・・・?』

〈あまりここでは寝てない〉

『え?じゃあどこで寝てるの?』

〈外〉


寝室があるのに野宿!?



『なんでこんな立派なベッドがあるのに使わないの!?』

〈ここ、落ち着かない〉

『それには全面的に同意する!
だけどそれなら模様替えすればいいんじゃない?』


というか、もっと物を置いてもいいと思う!


『着替えとかはどこにあるの?』

〈隣、衣裳部屋〉

『衣裳部屋っ!?』


そんなものまであるの!?

というか、さっきの人たちの態度といいこの豪華なお城みたいな建物といい・・・


『やっぱり、ラギアって偉い人?』

〈偉くはないって言った〉

『そ、そうだけど・・・なんか、諸々見てると偉い人にしか見えないっていうか』

〈まあ、“特別”だから〉

『特別?』

〈そう。アサヒには関係ないけど〉

『そうなの?』

〈うん。気にしなくていい〉

『そっか・・・』



よくわからないけど、このままの態度で大丈夫ってこと、かな?

ラギア本人が気にしてなさそうだし、大丈夫だよね!たぶん!!





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