学校に着いても動悸は治まらない。
動悸と比例するように歩くのも早くなってくる。

「なんだか色々ありすぎて学校が久しぶりに思えてきた……」

下駄箱前でぶつぶつと1人で喋っていると
「見里、おはよ」
「須藤先輩……!!」

図書委員会で同じ月曜日担当の須藤先輩が立っていた。
「なんか元気なくないか?だいじょぶ?」
そう言って私の頭にぽふっと手を乗せる。
「…………」
「おーい?」
少し垂れ目がちで栗色の瞳が途端に視界に広がる。
「だ、大丈夫……!!です!!!!」

びっくりして少し後ずさる。
「そんなに避けないでよ。」
もー、と言いながら私の手を取る。
「えっ!?!?」
「早く早く!遅刻しちゃうぞ〜」

そう笑いながら走り出した須藤先輩について行くのがやっとで手を話してもらうことも出来ない。

(うわぁぁぁ須藤先輩と手!!手を……!!!)
そんな事をぐるぐる考えているうちに2年の教室に着いた。と、同時に
♩♬*゜キーンコーンカーンコーン
チャイムが校舎に響く。
「やばっ!!遅れる〜!!」

早口で言い残して走り去ろうとする先輩の腕をパシッと掴む。
「ぁ……ぁ、あの!!!ぉ、送っていだいてありがとうございます……」
「あちゃ!バレちゃってたか〜笑 自然にしたつもりなんだけど。
まぁいいや!どういたしまして。」
ニコッと爽やかに笑って走っていく先輩を見送る。

「………おやおや〜?おやおやおや〜!?!?!?」
ニヤニヤとしながら友達の真琴がやってくる。
「随分と豪華なお見送りじゃない、巫女さん?」
「真琴!バカにしてるでしょ?」
「やだなぁ、馬鹿になんてしてないわよ!1ミクロンもね!ただ、あの爽やか王子の名で有名な運動神経良し、顔良し、頭よしの須藤先輩と手をつないでご登校なんて素晴らしいじゃない?」
そうつらつらと語る真琴を睨みつける。

「先輩とはそういうんじゃないよ。………そういうんになりたいのは、確かだけど。」
そうポツリと話す。
私は須藤先輩が好きだ。
こんなモブの私にも優しく笑顔で話しかけてくれる。
片隅に咲いた小さな雑草の花にも……
「でた、朱のネガティヴ発言!!」
「な、何さ……」
「あんた顔は可愛いんだからもっと積極的になったら完璧なのに。」
サラッと褒めてくる真琴はすごいと思う。
「真琴のほうが可愛いよ。」
「えっやだ朱!!好き!!!!!」

くだらない会話を続けていると、廊下から悲鳴が聞こえた。
「きゃーっ!明日野くん!!明日野くんが登校してる!!!」
嘘!?とかきゃーっと他クラスからも黄色い歓声が聞こえる。
それを聞いて、私と真琴はバッと廊下を見る。
「嘘でしょ?!明日野くんってあの入学式以来学校に来てないってうわさの!?ちょっと朱!!行くわよ!!!」
「はぁ?!?!?!勘弁してよ!!!!!!」

同じ学校とは聞いてたけど、こんなに人気だ、とも入学式以来登校してない、ってのも聞いてないぞ?!?!

「あーすーのーくーーーーーん!!!!!」
目が合わせたいらしく、真琴が世界一うるさいんじゃないかというような声で叫ぶ。
「ちょっとまこっ……」

真琴の声を抑えようとすると、
尚くんと目が合った。
目が合ってしまった!!!!!!!!

「やった!朱!!こっち来るよ!!!」
そう言って真琴は私を叩く。
教室へ引き返そう。
そう思ったのに

「………………朱、何してるの?」
聞き慣れた声が耳に響いて見慣れた顔が目の前にあった。

「あ、そうだ。これ、おばぁさんが朱に渡しとけって。」
そう言ってカバンからお弁当を取り出す。
「じゃ、ちゃんと渡したからね。
……それと鍵。ちゃんと持っていきなよ。
ドジ。」
そう意地悪そうに微笑みながら言って、私の頭を撫でて教室へ入っていった。

これまでにないくらい2年廊下が静まりかえっている。
数秒して途端にみんな喋り始める。
「あの子……どういう事?」
「同棲してたの?」「いや、でもあの子?」
「明日野くんと釣り合ってないじゃん?」「そう言えばさっき、須藤先輩とも手繋いでたよね。」

周りの視線が突き刺さる。痛い。
どうしよう。

「えぇ!?!人違い!?!?!?」
突然真琴が大きな声を出す。
また廊下が静かになる。
「真琴……?」
「そうだよね!!朱の家神社だし!!!他人がとまれるわけないもん!!!」
なんだかよく分からない状況に焦っていると
「あんたも話、合わせてよ。この注目を避けるにはこれしかないでしょ。」

わたしはその言葉でやっと意味がわかった。
真琴は私がいじめられないように嘘言ってくれてるんだ。
「そ、そうだよ!!そもそも私家に男の人呼んだことないし!!!!!!」
そう精一杯叫ぶと周りは
「なんだ」「人違いだってー」と一気に散らばって行った。

「……真琴、ありがと。」
真琴の行動をしみじみと感動していると、ガッと方を掴まれた。

「話、聞かせてもらうわよ……?」

真琴が黒い笑顔で立っていた。

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