シンさんは愛妻家
「先生、ご馳走様でした。
とても美味しいご飯でした。」

と彼女は深々と頭を下げる。

「うん。君は若いんだから、そんなものばかり食べてると、身体を壊すよ。
彩(いろどり)に気をつけて食事をしなさい。」

「…なんか先生、お母さんみたいですね。」

「口うるさくて悪かったね」

と僕が口をへの字にすると、

「いいえ!そうじゃありません。
…僕、じゃあなくて、私もにも家族はいないので、そんな風に言ってくれる人って…
あんまりいないから…嬉しかっただけです。
ありがとうございました」

とペコんと勢いよく頭を下げて部屋を出て行く。

…ああ、そう。うれしいんだ?

『僕』って?

ああ、えーと

性同一性障害?…かな

僕の友人にもいるし…そう珍しいわけじゃない。


と心の中で思ったけど…



僕が彼女?彼?を昼ごはんに誘ったのは成り行き…

そう自分では思っていて

うん。

心と身体があっていない子なんだな…と

ここでは女の子で通しているんだ。



その時はそれ以上の感情も何も持つことは無かった。





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