真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

ーー広務Ver.ーー

ーー純白のウェディングドレスを身に纏った彼女は本当に美しかった。

イングリッシュガーデンで執り行われたパーティースタイルの結婚式。

青々とした芝生に、ボタニカルの彫刻が、あしらわれたストーンアーチ。

その頂点を飾るのは彼女が身につけているウェディングベールと同じ素材で作られた、オーガンジーのリボンと色とりどりの季節の花々。

旬の花をブーケにも取り入れて、春の陽に包まれた花嫁姿の彼女は完璧だった。

彼女にとって今年は、20代最後の節目の年。

生涯の伴侶に選んだのは.......、

俺ではなかった。

自分が、この場にいることが未だに納得できない。こんなにも恋い焦がれている女(ひと)の花嫁姿を一番奪われたくない男に奪われて、その男の傍らで微笑む彼女の美しさに見惚れている自分の不甲斐なさに吐き気がする。

俺はその場に居たたまれなくなり、席を外した。

庭園内に設けられたチャペルに逃げ込み、ため息にも似た深呼吸を施す。

しかし、いくら呼吸を整えて気持ちを落ち着かせようとしても、叶うはずもなく。俺の心臓は彼女を永遠に奪われてしまった喪失感と、もう過去には二度と戻れないのだという焦燥感で動悸が止まらなかった。

清浄なチャペルの中に独り身を置いて逃れられない苦しみにもがいていると、やがてチャペルの重い扉が開いて一筋の光が差し込んだ。

「広務さん.......、ここに居たのね」

「優花......」

予期せぬ想い人の登場に、俺は彼女の名前を呼んだまま身動きが取れない。

金縛りにあったような感覚を味わいながら優花を見つめ続けていると、彼女はウェディングドレスの長い裾を引きずりながら俺のもとへと歩んできて、こう言った。

「広務さん。あの男(ひと)から私を奪って」

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