真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
現在、PM4:30

彼の定時は、PM6:00それなのに、この時間で上がれたという事は。彼が私とのデートのために、マッハで仕事を片付けてくれたからに違いない。

”愛され女”

憧れの称号を手にして調子付いた私は、彼から連絡が来たらソッコーで家を飛び出せるようにと傍に置いておいた、お出かけ用のバッグを持って玄関へと猛ダッシュした。

美脚パンプスをつま先に引っ掛けて玄関を勢い良く開けた私は、まだ夕暮れには遠い活気溢れる休日の都会へと繰り出した。

つま先に引っ掛かっていたパンプスは歩いている間にいつのまにか、きちんとかかとまで収まっていて。私はそんな様子に、”ああ。随分と力強い足取りだったんだなぁ......”と、思いながら、それもそのはず。”最愛の男(ひと)に会いに行くんだから、歩調にだって自ずと気合が入る”と的確な自己分析をして妙に納得した。

広務さん、今どの辺りかな......?

彼の会社から私の最寄り駅までは乗り換えなしで20分。

もうすぐ会えるっていうのに。

それでも。僅かな間でも、片時も離れていたくない。というのが私の本音。

”今どの駅?”と、彼へLINEしたいけど、さすがに自重しなきゃ。

だから、せめて彼が私へ今まで送ってくれた”LOVE LINE”を眺めて、逸る気持ちを落ち着かせようと、スマホを取り出した。 
 
”後で電話するね”

”早く会いたい......” 

”今から迎えに行くよ” 

以前は、くだらないアプリの収容場所だった私のスマホが、今や彼と私を繋ぐ愛の架け橋に変わってる。

彼からのラブメッセージを読みながら繁華街を意気揚々と歩き、辿り着いた私の最寄り駅。

後10分ほど待てば彼と会える。 

私は改札口を食い入るように見つめて彼の出迎えに備えた。 

そして、約束の10分後。狭い改札口を通過する、たくさんの人の中に一際目を引くイケメンを見つけた私は、一目散に駆け寄った。
  
「おかえりなさいっ!」

直訳すると。

”ようこそ私のもとへ、おかえりなさいマイダーリン”

そんな意味を込めて。私は彼を、とびきりの笑顔で出迎えた。

「ただいま。やっと、優花に会えた」

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