捨てられなかった想いを、今
捨てられなかった想いを、今
「康太(こうた)やばい!」


「なにがですか」



楽屋についたとたんの俺の叫び声に怪訝な顔をする後輩の康太。



「客のなかに中学の頃に好きだった子がいる!!」


「へー。よく覚えてますね。あ、そういえば濱田(はまだ)さんここに住んでたんでしたっけ」



特段興味もなさそうにドリンクを飲みながら話す。



「うん。1年間だけ」



父さんの転勤でこの地に住んでいたのは中学1年生の1年間だけ。
いわゆる転勤族というもので、各地を転々としていたから半年以内に転校したこともあるし1年も珍しいものではない。



「だから、一瞬黙ったんすか?しっかりしてくださいよねー」


「それはごめん。いつかいたりしないかなとか思ってたんだけどさ、いままで1度もいなくて。やっと見つけたから動揺した」



俺と康太の職業は声優で。
今日は康太と二人、北海道のイベントにきている。

北海道に来ることは1年に1回くらい。

いつかどこかのイベントに来てくれていたらいいな、と。
ずっと思っていた。

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