私、今日からお金持ち目指します?
プロローグ
青天の霹靂、という言葉があるが、今がまさにそれだ。

「えっと、お父さん、もう一度言ってくれる?」
「すまない!」

父が娘に頭を下げるとは……。

「冬夏ちゃん、ごめんね、こんな状態になっちゃって」

母はこんな時も……やっぱりいつもの母だ。ニッコリ笑って玉露を優雅に啜る。

「で、借金はないのね!」

さっきまで情けない顔をしていた父が、「当然だ!」と胸を張る。

「冬彦さんの作るケーキやクッキーは最高なのに……」

抹茶クッキーを口に入れた母が、「ああ、美味しい」と頬を押さえる。
「夏美ちゃん、ありがとう」と父がデレッと目尻を下げる。

何をイチャついているのだ! それどころではないだろう!

「で、経営が危ないってどういうこと?」
「ほら、うちって老舗でしょう?」

それの何がいけないのだ?

「和菓子屋だったら良かったんだけど……」
「僕は和菓子が苦手だ!」

二人が何を言いたいのか、話の内容が全く見えない。

「だから、ちゃんと説明して! 老舗洋菓子店の何がいけないの?」
「だって、三軒も新しいお店ができちゃったでしょう」

母の言う通りだった。
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