くるみさんの不運な一日

22:45『営業課』

「いや、それ俺が聞きたい」

苦笑――って感じの笑みを浮かべて、椅子に深くもたれた天川智明は、近付くあたしをジッと見据えて、「まだ帰ってなかったのか?」と言葉を続けた。


帰ってたけど忘れ物を取りに来た――なんて説明するのが面倒だから、「まあ」と曖昧な返事をすると、「そっか」って天川智明は笑う。


何を笑う事があるんだろうか。


何が面白いっていうんだろうか。


まさかその極上の笑みで、あたしを悩殺しようとでも――。


思ってる訳はない。


「天川さんは?」

「ん?」
< 141 / 247 >

この作品をシェア

pagetop