イミテーションラブ
デート
時間に余裕のある時によく利用するカフェ。
朝は出勤前のリーマンが多い。
モーニングはコーヒーと、バターがたっぷり塗られているトースト、ゆで卵が付く。
同じ内容を注文した田崎涼介が、美味しそうにトーストを頬張っている。
「うまいな、このパン!」
「でしょ?」
ペロリと平らげるも、まだお腹が空いてる様子。
お気に入りのこの店のパンをうまいと言ってくれたのが嬉しくて、まだ食べてない自分のトーストを差し出した。
「これも食べる?私、卵だけでいいから」
「おっ、サンキュー!」
二枚目のトーストも、受け取るとすぐに平らげてしまう。
田崎は当たり前の様に、いつものように自然に振る舞ってくれている。
男性と話すのが得意でない私も楽しく過ごせてしまう。
昨日の事があって、どう接すればいいのか一瞬悩んだけど、田崎のおかげで悩む事もないし、会話にも困らない。しかも会社にいる時よりも優しく感じられた。
今日は日曜日だし、寂しい同僚を元気づけようとしてくれてるだけかもしれないけど…
「で、どこいきたい?」
「近いとこがいいな…」
「ここからだと、水族館、映画、美術館あたりが近いかな?」
「水族館がいいな!イルカが見たい!」
「じゃあ決定」
行き先が決まって、開演時間とアクセスを調べてから電車に乗った。
ものの30分もしないうちに到着地に着いて、チケット売り場で入場券を購入する。
私がお財布を取り出すと「あ、いいよ」と田崎涼介に二人分のチケットを買わせてしまった。
「…ありがとう」
「どういたしまして」
「今度埋め合わせするから」
「じゃあ、次回は映画にしよう」
「…う、うん」
返答に困ったけど、チケットを受け取り、そのまま入り口から水族館に入った。

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