ツンデレ同期にビターなチョコを。
告白
「あーっ、寒い」
 営業先から直帰するために同期の蒼山匡臣と歩きながら、私は両手を擦り合わせた。

 匡臣は私の同期で、今は同じ営業部、しかも同じプロジェクトを担当している。匡臣の営業スタイルは理詰めで、反対に私は、明るさを生かして人情に訴える。正反対な性格だけど、それが功を奏して中々良いコンビだと言われている。

 匡臣はイケメンで仕事も出来るし、紺色のスーツを皺一つなく着こなして、持ち物のセンスも良い。時折掛ける眼鏡も似合ってる。新入社員の時から、私は匡臣のことが好きだった。気がつけば匡臣のことを目で追ってるし、社内ですれ違えばドキドキする。匡臣は、同期のよしみなのか、たまにご飯や珈琲をおごってくれたり、仕事のミスをかばってくれたりしてくれるけれど、大体はつっけんどんだ。

 でも何故か、私も匡臣も恋人を作らず、つかず離れずの同期の関係を続けながら、もう5年経つ。そろそろ、この気持ちに蹴りをつけたいと思っていた。その時、ちょうど異動で同じ部署になり、同じプロジェクトの担当になった。

 今日はバレンタインデー。告白するには良いタイミングだった。私は、甘さ控えめのビターチョコレートを作り、紺色の箱に入れて赤のリボンを掛けた。駅に着いたら、別れる前に渡そう。そう思っていると、あっという間に駅に着いてしまった。

「ねえ、匡臣」
 緊張気味に声を掛けると、「なんだ」と怪訝そうに匡臣が私を見た。
「今日バレンタインデーじゃない。それで、これ」
 鞄の中からチョコレートの箱を取りだして匡臣に差し出すと、匡臣は目を丸くして、私を見た。
「初めてだな、入社してから。同期のよしみってやつか」
「バカ、そんな面倒なことしないわよ」
 匡臣は照れくさそうに目を逸らした。
「こういうのは、慣れてない」
「一人の女の子として、渡したいの。受け取ってくれないかな」
 駅前の人混みの中で、目をぎゅっとつむって、匡臣が受け取ってくれるのを待った。でも、中々受け取ってくれる気配が無いので、もう駄目かな、と思った瞬間、

「仕方ないな、一人の男としてお前ごともらってやる」

 そう言って、匡臣は私を強く抱き寄せた。私は堪らなくなって抱き締め返した。匡臣は、本当にツンデレだ。でも、そんな匡臣が、愛しい。
「あっ、チョコレートも食べてよね。せっかく作ったんだから」
「毒味だな」
「もう、意地悪!」
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