バレンタインに想いをのせて
義理チョコとともに
「いつもお世話になっております。弊社からのささやかな気持ちです。」

笑顔ともに可愛くラッピングされた義理チョコを手渡していく。

今日はバレンタイン。
受付に座る私は、朝からこの言葉を何度も繰り返している。

バレンタインデーの今日、わが社を訪れる取引先の一人一人にチョコを渡すこの行事は、知っている人も多く笑顔で受付を訪ねてくれる。

そんな受付嬢の私は、カウンターの下にコッソリ本命チョコをしのばせていた。

渡したいなと思っている相手は、取引先のA社営業課長の岡田さん。
今日の14時に来社予定になっている。

実は、岡田さんとは、通っているスポーツクラブが同じで、休憩ラウンジで話をしたことが数回ある。

オフィスで見るスーツ姿の彼は、端正な顔立ちで長身で颯爽としていて、もちろん格好いいのだが、
スポーツクラブの休憩ラウンジで見かける彼は、格好いいだけでなく色気が半端ないのだ。

大人セクシーなイケメン。
運動を終えた後の気だるげな雰囲気が、スーツ姿の時より3割り増しで、私の脳を刺激してくる。

何度か話をするうちに、そんな岡田さんに好意を抱くようになった。

「好きです。」とハッキリ告白する勇気はないが、会社からの義理チョコと一緒に本命チョコを渡すくらいなら出来るかな、と思って持ってきた。

13時50分、エントランスに岡田さんの姿が見えた。
今日も颯爽としたスーツ姿で、真っ直ぐに受付に向かって歩いてくる。

営業一課に取り次ぎをした後、本命チョコと義理チョコを重ねて手渡した。
「いつもお世話になっております。弊社からのささやかな気持ちです。」

こちらを真っ直ぐ見て、少し目を見開いた後、爽やかな笑顔で「ありがとうございます。」と言った。
そして、エレベーターに向かって歩いて行った。

15時半、エレベーターから出てきた岡田さんが受付にやって来た。

「本日はありがとうございました。後程、お礼の件で話がありますので、こちらに18時迄に連絡をいただけますか。」
そう言って、名刺を1枚取り出した。
受け取って裏を見ると、プライベートの番号とアドレスが、手書きの綺麗な字で書かれている。

驚いて岡田さんを見ると、
「後でね。告白の言葉は俺から言わせて。」
耳元でセクシーな声で囁いて、とびきりの笑顔を見せてエントランスから出て行った。
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