無口な告白
無口な告白
「申し訳ありません。来月は出張になりましたので、今年はどなたからのも遠慮してるんです」
2月14日、同期の男がそう言っているのを聞いたのは朝のことだった。
女子社員達は残念がり、陰で泣いている女の子もいた。
そのイケメンっぷりは社内でも有名で、毎年バレンタインには山ほどの贈り物を受け取っていたが、今年は3月14日に不在なので一切受け取らないことにしたらしい。
クールな容姿で冷たそうな印象もあるけど、誠実な彼らしい理由だなと思った。
けれど私は内心で溜め息を吐いていた。
今年、私は長年の片想いを終わらせるべく彼に初めてチョコを渡そうと思っていたのだ。
「あーあ、なんで今年に限ってあんな宣言しちゃうのかな。タイミング悪いにもほどがあるわよ」
私の告白を応援してくれてた同僚が恨めしそうに呟いた。
「きっと告白なんかしない方がいいっていうことなのよ。どうせ振られるに決まってるから」
社内一人気者の彼が、私に振り向いてくれるとは思えない。
「そんなこと言ってみなきゃわからないじゃない。……あれ?ねえ、そのピアスちょっと…」
同僚は私の耳を指差し何か言いかけたけど、ちょうど上司から呼ばれてしまい、その会話はそこで終わってしまったのだった。
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