ア ヤ メ。
序章






繁華街.路地裏_____________



P.М. 8:35









男の荒い息遣いが響く。




ゴミ箱もなぎ倒して、四つん這いで逃げていく一人の姿に、もう一人は舌つづみを打つ。





「ハアッ………ハッ………」





この世の終わりというような顔で、はだけた華やかなスーツに見を包んでいる男。



なんとも対象的だ。





「お願いだ………!!何でもするからっ………殺さないでっ………」




「生憎と」




男の言葉に容赦なく自身の発言を被せ、髪を掻き上げる男。





「僕はその表情が大好きなんだ」





夜の月に照らされて浮かび上がるその美しい顔には、誰もが恐怖を覚えることだろう。






「君は本当に良い顔をする………。」





長い指がスーツの男の頬を撫でる。



女なら一瞬で恋に落ちるこの仕草も、この状況ではどうしようもない。





「ハアッハアッハアッハッ……………………」





荒い息が血しぶきと共に途絶える。



男は声を上げて笑った。



可笑しくて同仕様もないという風に。











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