仮初めマリッジ～イジワル社長が逃してくれません～

第二章 シンデレラの誓約書

ゴールデンウィーク中、カフェでのアルバイトに明け暮れていた私は、毎晩遅くにマネージャーの小野寺さんと電話で打ち合わせ行っていた。

撮影期間は五月から六月にかけての約二ヶ月。
各種広告やショートムービーの掲載は、七月中旬からの２クールだ。

メールに添付されていた資料を見ると、新郎新婦の打ち合わせシーン等のために私服設定の撮影日が何日も指定されている。

「これは衣装がたくさん必要そうですが……新しい衣装を購入することになったりしますか！？」

まさかこのまま、連休中のバイト代がゼロになるんじゃないかと戦慄する。

「いや。必要な衣装は『エテルニタ』が全て用意しているそうだ。安心していい」

小野寺さんはそう言って、電話口でふっと笑った。

「そうですか、よかったです」

ほっと胸を撫でおろしたのも束の間。
こちら側の出費がゼロというお仕事内容に、逆に少々不安になる。

本当に何も持っていかなくていいの？

『衣装チェンジできない？　では琴石さんはここで撮影終了となります。お疲れ様でした』

なんて言われない！？

どうやら下っ端生活が長いせいで、ネガティブな方向の職業病が発症しているらしい。