愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
2.俺の奥さん



「榊、もうあがったらどうだ」

同じチームの上司・兼広(かねひろ)さんが声をかけてきた。俺はちょうど今日の分のデータをまとめ終えたところだった。

「データチェック、明日お願いできますか?」
「おう、マネジメントのチームには明日中に回しとく」

時計を見ると、19時半だ。今から帰れば20時過ぎには帰宅できる。

「早く帰ってやれよ。新婚なんだから」
「そうよ、奥さん、ごはん作って待ってるんでしょう?」

横から口を挟んできたのは同期唯一の女子であり、同じチームの日向麻紀(ひゅうがまき)だ。世話焼きの日向は、俺が急転直下の結婚を決めたことを一番喜んでくれている。
兼広さんもニヤニヤ笑って言う。

「お、奥さんのメシ。いいじゃないか。楽しみだな」
「早番と休みの日だけですがね。今日は夕飯を作ってくれていると思います」
「美味いか?」
「上手ですよ。実家暮らしだったので作り慣れていないなんて言ってましたが、頑張ってくれています」

あまりノロケに聞こえないようにひかえめに答えた。男ばかりの職場なせいか、みんな小学生男子みたいなところがある。新婚というだけで冷やかされる毎日だ。

「可愛い奥さんの手料理だもん。多少まずくたって美味しく感じちゃうよねぇ」

日向が失礼なことを言うので、俺はきちんと言葉を付け足した。

「彼女の作る料理は、美味いよ。俺好みの味付けなんだ」
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