最後のプロポーズ
「慎也、私も話があるの」
「私から話してもいいかな?」
「…分かった」
「待って!!
隣じゃなくて、向かいに座って」
「…何で?」
「お願い」
「……分かった」
慎也が向かいのイスに座るのを確認すると、私も座った。
「で……?
何、話って…」
「うん。
前に会った時私、早く自分の家に帰ったでしょ?」
「ああ…」
「私、“次の日、仕事で朝が早いから帰る”って言ったけど、本当は慎也に怒ったから帰ったの」
「…何で?」
「“別にどうでも良いだろ…”って言ったから」
「本当にどうでも良い…」
「私にとってはどうでも良くなかったの!!
「知らないで行ったみたいだけど、合コンに行ったんでしょ?
しかも女の子達は皆、20とか21とかで私より9歳、8歳も年下。
キレイでカワイイ子達も多かったんでしょ?
どうだったか気になるじゃない!!
だから、私は”楽しかった?“って聞いたのに…」
「…不安になった?」
「不安なのは…いつもだよ。
慎也は…自分からはほとんど連絡して来ないし、自分の話もして来ない。
バイトしてお金を貯めると写真を撮りに一人でどこかに行っては、私の知らない間に帰ってきてる。
付き合って1年目ぐらいの時に私が30になるまでに結婚したいって言ったら“…分かった”って言ったのに、今日まで結婚の話なんてされなかった。
あと2日で私は30になるのに…」
「……直子」
「私と結婚して下さい」
「……」
「私…慎也と結婚したいの。
だって、どれだけ不安でも、慎也と居ると幸せだと思うの。どうしてなのか自分でも分からないんだけど。
ごめんなさい…。別れ話をするつもりだったんだよね?」
「…するよ」
「うん…」
「…するよ。
結婚……」
「…えっ?」
「俺のしたかった話を…先にするなよ」
「慎也の話って…プロポーズ…」
「指輪…」
「指輪?」
「プロポーズしたくせに…持ってないのか?」
「今日はバレンタインだから、チョコは持ってるけど…」
「手…」
「手?」
慎也は私の左手を手にとると、はめた。
「安いけど…」
小さくてもキラリと光る指輪を薬指に。
「……」
「…気に入らないか?」
「ううん。
一生外さない」
「…そうか?」
「うん」
「チョコ…」
「へっ?」
「くれ…」
「気に入らないかも…。
別れるかもしれないと思ったから、板チョコに…」
「直子がくれるなら…。
別にどんなチョコでも良い…」
「……うん」
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