秘密の会議は土曜日に
「今回のトラブルについては、誠に申し訳なく……」


「そういうのは良いから、さっさと原因の説明と対応策を出してよ」


高層ビルにあるお洒落なオフィスの一室。


エントランスには南国の木々が植えられて、オウムまで居てゆとりある空間なのに、担当の人の心には微塵のゆとりも無い。50代くらいの怖い顔をしたおじさんが、机をトントンと指で叩きながら私に説明を求めている。


「原因としましては一部のアプリケーションのライセンス処理に問題があり……」


「それは既に聞いた。ライセンスなら確認したばかりでしょう?それなのにどうして、トラブルになったか聞いてるの」


そんなの知らない。だって担当じゃないもん!


そう叫びたい気持ちを無理矢理に押さえつける。

社会人として謝らなきゃいけないのは百も承知だけど、自分が全く知らないことを責められるのはどうしてこんなに苦しいのか。


「確認方法に問題が無かったか、現在見直しております。対策については見直しが完了次第、ご報告いたします。」


震える声でやっと絞り出すように告げると、向かいに座るオジサンは私に聞こえるように舌打ちをした。


「その内容じゃ上に説明できないわけ。対策はいつ出てくるの。」


だから、知らないってば。

会社で手の空いてる人が総出でやっている見直し作業だけど、急いで会社を出てきた私にはいつ終わるかなんて知る由もない。


「確認させていただきますので少々お待ちを……」


携帯を取り出すと、また舌打ちが聞こえる。


「確認しないと分からないって、アンタ責任者だろ?」


ああ、胃が痛い。本当は今すぐここから逃げたい。


「申し訳ございません」


でもそんなことできるわけもないので、深々と頭を下げた上で一旦部屋を出て、携帯で社内に電話をかける。

< 2 / 147 >

この作品をシェア

pagetop