秘密の会議は土曜日に
「そそそれは恐悦至極に存じます。」


「いえ、一般的な誉め言葉としてではなく、すきなんです。」


「……。」


今信じられない言葉を聞いた気がした。多分打ち合わせを終えて疲れているから、幻聴だったんだと思う。



「もう一度言います。すきです。」


その時中学生の頃の思い出が心に甦る。


そうだ、閣下が私のような者に興味関心を持つなんてあり得ないんだ。だから、これは仕事の話題に違いない。


ありがとう鴻上くん。あなたが冗談の告白をしてくれたおかげで、私は余計な恥をかくことなくちゃんと閣下とお話しできるよ。



「隙、ですか?セキュリティホールについては見直しの結果問題なしとなりましたが……」


「違います、すきです」


「クワとかスキとかのスキですか。農具の在庫管理システムでも立ち上げるんですか?」


「いえ、弊社では農具は扱っておりません。

分かりやすく言うなら、あなたと休日をゆっくり一緒に過ごしたい。そういう類いの想いです。」


「新規プロジェクトに関する打ち合わせを、休日にも実施されたいとのご要望ですか……?」


「……すごい、見事に通じないんだな。

ひとまずそれでいいですよ。スケジュールが空いていれば今度の土曜に実施しましょう。詳細は別途ご連絡いたしますね。」
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