キライ、じゃないよ。

kashi.2




「本当に連絡つかないのね」

「原川?」


営業周りから営業所に戻ってくると、受付から面会人がいると聞かされて、ロビーにあるカフェコーナーに向かった俺は、開口一番にその相手から責められた。

待っていたのは同窓会の時に再会したクラスメートの原川だった。

そういえば会社の名刺を渡したんだった。

革張りのソファーに座りなおした彼女は、カフェで頼んだのだろうコーヒーに口をつけた。

今日も相変わらずの濃いメイクに、花柄のワンピースを着ている原川。

こんな平日の昼間に人の会社までやってくるなんて、暇なんだろうか?


「待たせて悪い……てか、今日は仕事休みなのか?」

「うち、変則勤務だから。今日はお休みなの。忙しいところにごめんなさいね。樫くん、連絡全然取れないから押しかけちゃったよ」


わざわざ押しかけてくるような用件があるのかと、彼女の目の前に座り姿勢を正した。


「忘れたの?忙しい樫くんに代わって、彼女の情報仕入れてあげてきたのに」

「彼女?」


原川の言葉の意味が分からない。

戸惑う俺に呆れた様子で原川は溜息をついた。


「忘れてるのね、あの日の帰りに話したこと」

「あの……日?」

「……呆れた。本当に忘れてるんだ。と言うか、私のこと信用してなかったわね。失礼だなぁ……」


本気で怒り出した原川の様子に、必死に思い出そうと記憶を引き出していく。




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