キライ、じゃないよ。
過去

side.kashi

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高3最後の冬、窓際の席だった俺はブレザーの下に裏起毛のパーカーを着込んで丸くなって過ごす事が多かった。

その日は前夜から降り続いた雪が校庭を白く染め、学校周囲の桜の木には白い花を咲かせた。

あと1ヶ月後には薄いピンクの花に変わるだろうが、今は冷たく柔らかい花弁がヒラヒラと落ちていくのが見える。


「寒いはずだね、また降り出した」


中休み、自分の席で丸くなっていた俺の席に近づいてきたのは皐月 護。

いつも連んでいる友人の1人だ。

黒よりも少し明るい色の髪が肩の位置よりも少し下まで伸びている。

俺の視線に合わせるように頭を傾ければ、その長い髪が視界にサラサラと溢れるように映った。


「樫、ネコみたい」

「あ?だってめちゃくちゃ寒いんだよ、ここ」


丸くなった俺の背中を掌で叩き、「情けないなぁ」と笑う護。


「ストーブの近くにいるやつに、俺の辛さは分からないね」

「夏にも愚痴ってたね。あの時は紫外線浴びまくってて、俺の顔がツートンになるって」


ケラケラと笑う護。

遠慮なく貶してくる彼女のこの気楽さが、隣にいて心地いい。

別に自慢してる訳じゃないが、高校に入って成長ホルモンが過剰分泌されているのかと思う位に身長が一気に伸びた。

中学時代1番前を3年間陣取っていたのが嘘みたいに。

3年の最初の身体測定では、182cmでクラス一デカイ奴になっていた。
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