ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
◇その婚姻は誰がために

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 夏は瑞々しい緑に彩られるこの街も、今はすっかり冬化粧をしております。
 氷のように透き通った窓ガラスの向こうに見える木々は、白い霧氷に覆われて美しくも寂しそうでありました。

 私は今日、お嫁にゆきます。
 思い初めたあなたのことは、一生忘れません。

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祖母が生前、誰にも見つからないように隠していたらしき古い日記は、偶然私が蔵の奥から見つけ出してしまった。

そこに記されていたのは、結ばれることのなかった初恋の人との思い出。初々しく、控えめながら情熱的で、とても切ない想いが綴られていた。


親同士が決めた政略結婚をしたときの祖母が見ていたのと同じような景色を、今、桜色の着物を着つけた私も窓から眺めている。

もっとも、政略結婚する運命であるのは同じでも、私には今現在好きな相手も、初恋の人すらもいないのだけれど。

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