エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい

予想外の提案

そんなすったもんだあった合コンから一ヶ月が過ぎようとしていた。私の日常は相変わらず仕事に追われる日々だったりする。

あの日以来、気掛かりだった京極さんが凛華にちょっかいを出したかどうかという事はどうやら大丈夫だったらしい事を凛華との電話で知った。

只今、凛華は最近職場に配属された凛華曰くイケメンパーフェクト上司にお熱らしく、電話の内容はほぼ99.9%それだった。

電話越しの凛華の声はとても弾んでいてその素敵上司とうまくいく事を願いたい。そんな事を考えながら自分のデスクで公正証書の草案をタイピングしていたそのとき。

「みんなちょっとこっちに来てくれ」

ボスのそんな一声に私は仕事を中断していつも朝礼を行う応接室へと他の従業員と共に足を進めた。さてさて何の話だろうか? そんな事を考えながら部屋の中へと入ったその時、目に飛び込んできたその光景に思わず、息を呑んだ。

驚いて目を見開く私の目に飛び込んできたのは見覚えがある顔だった。思わず自分の頰を抓ってみたけれども襲ってきた鈍痛にこれは現実なのだと思い知らされる。

「今日から一緒に働く事になった東條聖弁護士だ。東條くんは主に医療訴訟や住宅瑕疵問題、離婚訴訟に長けている非常に優秀な弁護士だ。これから仲間として共に頑張っていこう。それでは東條くん、一言挨拶を」

今日からここで働く……?

ボスの声が頭の中でグルグルと巡り、自分の顔が引き攣っていく。

「皆さんと一緒にひとりでも多くのクライアントさんの悩みを解消出来るように、尽力していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します」

現実を到底受け入れられそうにない私の耳にパーフェクトとも言える東條さんの挨拶が届いた。その姿にボスや他のみんなは笑顔で拍手を送っている中、私だけがそこに置いてけぼりを食っていた。
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