守りたい人【完】(番外編完)

「なんも、誰もいない今日行かなくても……」

「山菜は早いもの勝ちなんですよ? 明日になったら、全部採られてるかもしれないじゃないですか」

「そんなもんなんか」

「そんなもんです。待ってて下さい。今日は美味しい山菜の天ぷらですよ」

「楽しみにしてるけど、何かあったらすぐに電話しいや」

「分かってますよ」


ふふっと笑えば、鍛冶君は納得いかない様子だったけど、引かない私を見て心配そうだったけど送り出してくれた。

大きく息を吸って外に出れば、温かい日差しが降り注ぐ。

あっという間に桜も散って、山がピンク色から緑に染まる。

5月に入った瞬間、日差しも温かくなって過ごしやすくなってきた。


下宿人が2人になってから何週間か経つけど、今ではすっかり慣れたもんだ。

鍛冶君のおかげで家の中も明るくなったし、朝比奈さんとも会話が少しづつ増えたように思う。

まぁ、当たり障りのない会話だけだけどね。


相変わらず無口で無表情だから、何考えてるか分からない。

反対に、鍛冶君はずーっと喋っている。

全く正反対の2人だけど、年も同じだからか上手くやってるみたい。

たまに一緒に食堂で飲んでる姿を見ては、嬉しくなったりしてる。

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