守りたい人【完】(番外編完)
「はい、どうぞ」
玄関先のベンチに座っていた朝比奈さんに、お茶を渡す。
すると、ボーっと山を見ていた視線が隣に座った私に向けられた。
「どうも」
「凄いですね、この木のベンチも朝比奈さんが直したんでしょ?」
「腐ってる所があったからな」
「器用ですよね。なんでもできちゃうんですもん」
ふふっと笑って、朝比奈さんと同じようにお茶を飲めば、温かい風が頬を撫でていく。
気が付けば5月も終わって、もう6月。
昼間は暑いくらいで、もうすぐ梅雨の季節になる。
だけど、木陰のここは涼しくて、吹いてくる風が心地いい。
それがあまりにも気持ちよくて、大きく息を吸って空に向かって大きく背伸びをした。
「怪我、治ったのか」
そんな時、ポツリと声が聞こえて視線を向ける。
すると、視線だけ私に向けた朝比奈さんがグラスに口を付けたまま、チラリと捻挫した足の方を見た。
その姿に、ニッコリと微笑みかける。
「おかげ様で、もう全快です」
「無理するな。また捻るぞ」
「ふふ、ありがとうございます」