守りたい人【完】(番外編完)

「あんた、変わったよ」


そんな事を思っていると、ポツリと朝比奈さんがそう呟いた。

その言葉に、瞬きも忘れて隣に視線を向ける。

すると、少しだけ片方の口端を持ち上げた朝比奈さんが黒目がちな瞳を私に向けて口を開いた。


「初めて会った時は、何もかも我慢して、必死に良い子を演じてるようだった」

「――」

「生き辛そうだなと思った。窮屈そうに生きてるなと思った」

「ふふっ。そう言われれば、そうかもしれないです」


あの頃は、周りの目ばかり気にして生きていたように思う。

誰からも後ろ指を指されないように、良い子を演じていた。

だけど、あの頃は演じる事が普通で、本当の自分がどれなのか分からなくなっていた。

きっと、それが爆発して自暴自棄になっていたんだと思う。


そして、上手くいかない事を全部誰かのせいにしてた。

自分は頑張ってきたのに、どうして? って。

今思えば、本当に幼稚な考えだったと思う。


「でも、あの頃の朝比奈さんも酷いもんでしたよ?」


だけど、あの頃の自分と同じように出会ったばかりの朝比奈さんを思い出して、クスクスと笑う。

すると、少しだけ不機嫌そうに眉根を寄せた朝比奈さんは、思い出すように視線を上に向けた。
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