守りたい人【完】(番外編完)

「あ、えっと、お礼が遅くなりましたけど、あの日駅から送って下さってありがとうございます」

「――」

「えっと、朝比奈さん28歳って聞きました。私、26なんです。年も近いので、気兼ねなく何でも仰ってください」

「――」

「嫌いな食べ物とかあります? 母まではいかないですが、私も料理はある程度なんでも作れるので、何かリクエストでもあれば」


必死に朝比奈さんとの距離を縮めようと、笑顔で会話の引き出しを出しまくる。

それなのに、相変わらず無視を決め込む朝比奈さんの態度に、流石の私もイライラが募ってきた。


人が話しているのに、目線も合わせず相槌も打たず返事もなしって一体どういう事だろう。

決して人見知りな性格ではないけれど、ここまで会話が成り立たない人との関係性を築くのは容易じゃない。


本当は仲良くなんてしたくないけど、両親が帰ってくるまでの間、この男とは2人暮らしのようなもんだ。

ギスギスしたまま過ごすのは精神衛生上よくない。

せっかく実家に帰ってきているのに、気を使って生活するなんてゴメンだ。

< 37 / 456 >

この作品をシェア

pagetop