守りたい人【完】(番外編完)

ハッとしてテーブルを見ると、そこには無数の缶ビールが転がっていた。

そして、何故か椅子が倒れて散らかっている。

その光景が妙に生々しくて、更に血の気が引いた。


やっちゃったんだ……。

覚えていないけど、やっちゃったんだ私……。

仮にもお客さんである、あの人とやっちゃったんだっ。


猛烈な自己嫌悪に陥りながら、頭を抱えてその場に座り込む。

バクバクと心臓の音が早鐘のようになって、グルグルと世界が回りだす。


「嘘でしょぉ……」


信じたくないのに、状況がそうだと突きつけてくる。

逃げきれないものが、目の前にある。

認めたくないけど、認めざる負えない状況。


「これから、どんな顔して話せばいいのよぉ」


この家には、彼と私の二人っきり。

どこにも逃げ場はない。



絶望にも似た現状に、もはや立ち上がる気力も湧かなかった――。

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