アマイロのリボンを掛けて
長い箱
「たく、たく、たく、た、たた、たくっみくっ!!」

「落ち着け?紅子どうした?また暗幕降りてるぞ?」

「はぁ、はぁ」

紅子が慌てて営業部に走り込んできたから
オレは背中をポンポンと叩いて落ち着かせてやる

オレの可愛い可愛い紅子は
…ちょっぴりパニックを起こしやすいから慣れたもんだ

「はいはい、さ、息を深く吐く……吸うと苦しくなるから」

「スーハースースースーっ!!」

って言ってるそばから吸ってるし!!!

「こらこら吸わない、息は吐く」

見事に暗幕になっている前髪をあげてやると

綺麗なブルーグレイの潤んだ瞳が小さく微笑んだ

「有り難う巧くん…」

「うん、いいよ…で?どうした?」

急に駆け込んでくるなんて…
会社ではなるべくおとなしくしている紅子なのに…

「今日一緒に行って欲しい所あるの…いいかな?」

可愛い紅子の頼みを断るわけないでしょ

「いいよ?ちょっと残業するけど待てる?」

明日までの見積書を仕上げなくてはならず
外出から帰ってから始めたのでまだ半ばだった

「うん、待てる!」

まるで小動物みたいにプルプル震えながら
力強くいっぱい頷く紅子の頭をヨシヨシと撫でてやると紅子はうっとりと目を閉じ……てから

急にハッ!と目を見開いてササッと身体を引いた

(ん?)

「ここ会社だから…巧くん…」

「今さらでしょ?パニック起こす紅子を溺愛するオレ
…営業部の名物だからみんな知ってる、周知の事実ってやつ?だから大丈夫でしょ」

周りを見ればみんな見て見ぬふりをしている

「そ…なの?」 

知らぬは本人ばかりなり…紅子だけだからね?

「うん。だから気にしないで甘えなさい」

暗幕ちゃんなんて揶揄されていた紅子が実は美女で

…顔を見せて仕事するようになってから
狙ってるやつが増えたのも事実で

……牽制の意味でも会社でも溺愛するのは正解なはずだ

(紅子はオレの彼女だもん! 紅子が性格可愛くて、さらにはとびきり美女だって気付いたのオレが一番だもーん!へへっーん)

お宝を発掘した気分…

「じゃ、あとでね?支度してくる!」

「ああ、走らなくていいぞー!」

紅子はパタパタと戻って行った


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