バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
『泣いていい』
 翌日の空は、これぞガーデンパーティー日和と言わんばかりに見事に晴れ渡った。

 まだ夏の名残りを感じさせる強い陽射しが、澄んだ空から燦々と降り注ぎ、緑の色濃い庭に飾られた無数の花々を生き生きと輝かせている。

 真っ白なテーブルクロスに置かれた美しい食器や、可憐なブーケや、シェフ渾身の料理の品々は、会場全体のイメージ効果を緻密に計算し尽くされた完璧なセッティング。

 そこに着飾った女性ゲストたちの艶やかな装いがプラスされて、まるで夢の国のようだ。

「今日はちょっと気温が高めだからメイク崩れが心配だったけど、大丈夫そうね」

 目立たないように庭の端っこで待機している私に声をかけてきたのは、ボヌシャンス迎賓館のヘアメイク担当スタッフだ。

 彼女は緊急お直し用のメイク用品が入ったポーチを腰に下げて、挙式が始まってからずっと、花嫁様のメイクの変化を一瞬たりとも見逃すまじと目を光らせている。

 その視線の先では、お人形のようなプリンセス・スタイルのウェデイングドレスを身に纏った笑顔の花嫁様が、たっぷりのベリーとピンクの薔薇で飾られたネイキッド・ウエディングケーキの横で、友人たちと記念写真を撮っている。

 ただでさえ素晴らしい屋敷と庭園が、隅々まで幸せなウェディング仕様にデコレートされて、絵本の世界に迷い込んだみたいだ。
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