教えて、空の色を
教えてやるよ
そんなこんなで紗由理と恋人になって

作業にも力が入る…よな

え?現金?

まぁ……そこは否定しねぇけど

紗由理を抱いてからぽんっと色とその配合を思いついた

「…これが岳の空……」

仕事終わりに作業場に来た紗由理が呟いた

青に緑を重ねた少し暗めだけれど深い青空に
黄色い光が入り込む

真ん中から右に向かい店名が入るように

さらに淡い白い光が射している

「ああ…そう、オレの描いた森の空だ」

紗由理がまっすぐ看板を見ていた

「有り難う…」

「いや、まぁ仕事だし…って何で泣くんだよ」

見れば……紗由理の目から涙が溢れてハラハラと流れていた

「ううん、何でもないの、何でもないの…空が空だから嬉しくて…」

空が空って…

「ん………見えんのか?そーいや?」


「うん…岳、やっぱりすごい…岳なら私に空を見せてくれるって信じてた」

紗由理は涙を拭いながら独り言のよう呟いた

静かに涙を流す紗由理があまりにも綺麗で息を飲む

涙が袖に染みを作るように

心に紗由理が染みていく

イイ女だよなぁホントに…

「紗由理…」

ペンキをつけないように気をつけながら
紗由理を腕の中に抱いて
その柔らかな髪に顔を埋めた

「泣くなよ…気に入んない?」

「ちが…逆…すごく素敵だよ?私にも見えるもの…あの、離して…」

「ダメ…ん?見える?」

「『空』が見える……岳……」

紗由理の声が震えている

「うん?空だな」

芳しい紗由理の香りが呼ぶ

すぐ近くで吐息を感じながら

そのまま唇を落として耳を噛む

「岳?」

ビクンと紗由理の身体が跳ねた

「黙って…」

耳から這うように唇に口付けをしていくと
紗由理の唇が小さく微笑みを描くのが見えた

その微笑みに言葉が溢れる

「好きだ…やっぱおまえ……イイ女」

「ばか…」

唇を抉じ開け舌を割りいれ味わうと唇を食む

何度も吸うように食めば

紗由理が苦しそうに甘い息を吐く

「んん…」

「紗由理?」

「…息、出来ない…」

膝が崩れそうな紗由理を抱えたまま事務所に引っ張ってきてチェアに座ると、膝上に抱き抱える格好になる

紗由理は軽く唇を開いたので、そこへ舌を差し込む

「ゆっくり…ほら」

「ん…」

二人で口付けを味わい…自然に紗由理の胸元へ…


(ってナニ考えてんだ…ここ仕事場!)

慌てて手を引いて身体を離す

「あ、あのさ部屋…来ねぇ?今日も帰したくないんだけど…」

柄にもなくそんな台詞を吐くと紗由理が小さく頷いた
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