教えて、空の色を
堅い彼女
気持ちよくて思わず空を見て目を細めていると…

スマートフォンがお尻の下で鳴り出した

「うわっと」

慌てて画面を見ると……

『嵯峨紗由理』

相手は紗由理だった

「もしもーし」

『あ、河野さん?今お忙しいですか?』

綺麗な声が耳にくすぐったかった

「いや?構想練るのに公園で寝転んでるとこだけど?」

『フフ、そうしたらパン…召し上がりませんか?お昼休みになったのでお届け出来ますよ』

「え?マジか、それいいな…青空公園に居るんだけど」

『そこなら行けるので待っていてください』

ここまで確かにパン屋からの方がイイモノ堂からより近い

「おお、あんがと」

『10分位で行きますね!』

通話を終わらせてから…なんだかそわそわしてしまう

寂しそうではあるけれど、間違いなく美人の紗由理
見てるだけでも嬉しいし…

(パン、旨いしな)

なんて言い訳をしてみる

暫く落ち着かなくてウロウロしていると
公園の入り口に紗由理が見えて…… 

「河野さーん!」

手を振りながら軽く小走りでやってきた紗由理の
微笑むその柔らかい表情にドキッとしてしまった

「おぅ…」

素っ気ないフリで手を上げて見せると紗由理が手にしたバスケットを置いた

「今日は自信作なんです!……なんて…」

中から取り出したのは何やら丸いパン

「何パン?」  

そう聞きながらも答えを聞く前に口に含むと
控えめだけれど甘いカスタードの味が口に広がる

「クリームパンです」

「うめ……」

あっという間に1つ食べてしまうと紗由理がフゥーっと息を吐き出した

「良かったぁ……」

しかも何やらホッとしたように手を胸に当てている

「自信作なんだろ?…変なやつ」

イチイチ仕草が可愛いな…

「心配だったんです……お口に合うかどうか」

そういえば立たせたままだったとベンチの隣の辺りをシャツの裾で払うと紗由理に座るようにジェスチャーする
 
「有難う御座います…」

並んで座ると…気持ちよく吹いた風が紗由理の髪をふわりと踊らせる

顎のラインが隠れていた髪から現れて、その綺麗さに暫し見とれてしまう




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