たった一つの勘違いなら。
番外編: ホームパーティ!
富樫真吾課長の結婚の噂は、春を過ぎても確定情報が出ない時点で下火になっていった。

その間に無事に社長への挨拶を済ませ、私たちは来春を目途に式を挙げて結婚することになっている。

順調なのだが、逆に正式発表前に社内にばれるのは良くないということで、会社帰りに一緒に外食することもなくなった。

私の家事力も多少は上がったし、どんなに忙しくても毎日会えるというこの暮らしは以前と比べれば夢のようではある。

が、隠し事をする日々はちょっと疲れるというのも本音。


結婚式を行う予定の来春までは、こんな風に隠しておくことになるんだろうか。ストレスが溜まってまた奇行に及ぶ前に、ちょっと弱音をこぼしてみた。

「マンションの出入り誰かに見られてないかなぁとか気になります」

「ごめんな、疲れるよね」

ソファで頭を引き寄せながら労わってもらえるだけで、もう癒されたかも。と思いつつ、もう少し甘えさせてもらおうと身体を寄せる。

「海外にでも行ってのびのびできるといいんだけど、もうちょっと待ってて。休み取れる日程もうすぐ確定させる」

「でも私が真吾さんと同じ時期に夏休み取るなんておかしくないですか?」

「結び付けて考えられるほど接点ないから。詩織は考えすぎ」

ということで、夏の終わり頃には旅行ができることになって気分が上がる。どこに行こうかと話も弾んだ。

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