輪廻ノ空-新選組異聞-

サクラン?

確かにミブデラにいる。
山門があるもん。

「あ……っ」

山門を入った横にあった筈の真新しい建物がない。というより、色々無いよ、スッキリしてる。テントも、隣接した小さいビルとかも、イロイロ。

空が…広い。

辺りに視線を彷徨わせてから、サカヤキの人に視線を戻した。

その人の周囲にはたくさんの子供。
お父さんやおじいちゃんが見てる時代劇に出て来る子供みたいな格好した男の子、女の子。そして…サカヤキの人。

「……本物?」

思わず手を伸ばして、困惑したような表情のその人の頬に触れ……

「…っ」

触れようとしたその手を掴まれた。

「熱があります。面も赤い………っ」

…………。

…………。

沈黙がおりて。

強く掴まれている訳でもないのに、ぎゅうと絞められた手首の痛みが、今の状況が夢ではない事を私に教えて。体がガタガタと震えてくるのをどうしようもできなくて。

「やっ、いやっ!
 なんで!
 どうしてっ!」

怖い。

どうなってるのっっ!

「誰か助けてっ」

お父さんっ!

という言葉はどうにか声にはせず、でも多分今のこの状況をどうにかしてくれるなら、バクマツが好きだと言って、私にも自分と同じように古武道を仕込んだお父さんしかいないよっ。

「お、落ち着いて」

わたしをなだめようと、更に距離を縮めたサカヤキの人、沖田総司から逃げようと階をずり上がる。

「危害を加えたり致しません。
 どうか落ち着いて」

心底焦ったようなビックリ眼なのに、優しい声で。

「沖田はんは、ええお人や」
「せや!沖田はんは優しおす!」

こどもたちが、怯える私からサカヤキの沖田総司を庇うように一斉に言い立てて。

「沖田……さん」

わたしが唯一知ってる人だ……。
ここがバクマツなら…。

「沖田さん……っ」

助けてくれるのはこの人だけかも、なんだよ!

わたしは号泣しながらサカヤキの人沖田総司に、今度は逆にしがみついていた。

「……っっ」

抱き留めてくれながら、すぐに硬直した体。

「おなご……です、か……?」
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