泡沫の夜
Monday



「おはよう、羽奏。俺も部長のコーヒー飲ませてもらっていいかな」

「り、篠……原さん……」

月曜日、彼は前日に宣言した通り部長のコーヒーを飲みに経理部にやってきた。

「……理央、だろ。約束忘れた?」

低く凄まれてドキッとする。

勿論ときめきの『ドキッ』ではない。

金曜日、彼より先に寝落ちした私は夢現つの状態で約束させられたらしいのだ。

1つは金曜日の夜だけじゃなく、ちゃんと恋人として付き合うこと。

もう1つは、彼の事を2人きりの時は、会社でも名前で呼ぶ事。

これには彼なりの言い分を無理押しさせられた感は否めない。

理央くんのことは好き。

彼が私のことを同じように考えてくれるのは嬉しいし、とても幸せ。

だけど正直言えば付き合う事を公にしたくはなかった。

だって理央くんは有名な人だもの。堂々と私が恋人だと宣言するには相当の時間と勇気が必要なのだ。

ふたりでいるのが自然になって、それでなんとなく周りに伝わるくらいがありがたい。

ありがたい……のだけど。

それでは不服らしい。

彼はこの話をしてからずっと不機嫌だ。



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