【完】溺れるほどに愛してあげる

夏祭り






「あげる」





そう言われたのは1学期最後の日。


夏休みに入る前。


あたしと金田が…しばらく会えなくなる最後の日。



だって学校がなかったら金田に会えない。


どうすることもできないから…



そんな風に寂しく思って今日を思いっきり大切にしようって、最後の会話になってもいいように思ってること全部言おうって決意したその時だった。



渡される2つに折られた白い紙。


カサっと音を立てて開くと、男の子にしては整った綺麗な字でローマ字と数字が均等に並べて書かれていた。





「これ…」

「俺のLINEYのID。
渡してなかったから」

「…いいの?」





あたしなんかがもらっていいの?



金田は何でそんなことを聞くんだ、みたいな疑問いっぱいの顔でコクリと頷いた。





「登録してもいい?」





嬉しい。嬉しすぎる。



あたしは弾んだ気持ちのまま金田にもらったIDを間違いないように打ち込んだ。



"検索"をタップすると


Chikage.K


瞬時に"追加"をタップする。



あぁ…この携帯の中に、気軽に金田と連絡を取れる手段がある。



ねぇ、これで夏休みも話せる?


夏休み中も金田の存在を感じていられる?





「バーコードでも交換…できたよね、そういえば」





わざわざIDを書かなくても、今ここにお互いの携帯があればすぐに追加できるんだ。


紙とペンと携帯を用意して…って面倒が省ける。


金田は知らなかったんだろうか?


それとも忘れてた?





「夢だったんだよ、こういうの」

「夢…?」





連絡先を紙に書いて渡すことが…金田の夢だったの?





「ふふっ…」

「そこ笑うとこじゃない」

「だって…」





女の子みたいなんだもん。



一目惚れしちゃって、でも諦めきれなくて…ダメ元で渡す自分の連絡先。


渡した直後から、携帯の通知が来るのを心待ちにして…通知音が鳴るたびビクリと反応して光の速さで携帯を開く。



そんなの少女マンガとかでよく見る女の子のそれだよ?



もしかして金田も少女マンガ読んだり…なんてその姿を想像するだけで笑っちゃうよ。


悪い意味じゃなくてね?

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