ひょっとして…から始まる恋は
そんな過酷な医療現場にいる彼が、こうしてこの場にいることが嬉しくて、ついそういうところって?と聞き返した。


「頼まれると何でも引き受けてしまうところ。高校時代もそれで損してただろ」


掃除当番や日直を変わってと頼まれて…と話す藤田君を見つめ、どうしてそんなこと知っているの!?と驚いた。


「男子の中でも有名だったんだよ。『お人好しの保科』って言われてて」


悪い意味ではなくてだよ…と言い足す彼に、少し顔が熱くなる。

自分が男子達に噂されていたのなんて初耳だし、そんな風に見られてたのかと思うと気恥ずかしい部分が大いにある。


「そ…そういう藤田君こそ、いつも皆の代表とか頼まれてたじゃない」


私以上にお人好しだよ…と言い返すと、まあそうかもね…と微笑む。
その笑顔が昔とちっとも変わってなくて、思わずきゅん…と胸が疼いた。


「何よぉ〜二人とも、コソコソ話しちゃって〜」


程良く酔った感じの松下さんが乱入してくる。
彼女は藤田君の隣に座り込み、飲んで飲んで…とビールを注ぎだす。

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