ひょっとして…から始まる恋は
「ふぅ…」


息を吐き出してスマホを上着のポケットに戻し、そうか…と呟いて空を見上げた。



「彼女か…」


いないとは思ってもいなかった。
寧ろ、いて当たり前だと考えていた。


あの花見会の夜にメッセージを送ってきた人だろうな。
美人でモデルみたいなスタイルの人か……。


そうか…ともう一度呟き、視線を地面に落とす。

丁度叔父の保科が借りていた本を大学の図書館に戻しに行っている最中で良かった。
秘書室の中でこれを知ったら、きっと仕事どころではなくなる。


「松下さんが聞いたらきっとガッカリするな」


自分でも相当にショックを受けていて、お陰でその場に立ち眩んでしまいそう。
それでも何とか歩き出して、図書館に着いて本を返却。



「お疲れ様です」


司書の女性はそう言って挨拶をし、私はどうも…と言いながら図書館の奥に入って行った。


なるべく誰もいない通路を探して歩き、一番奥の本棚の前で立ち竦む。



(今更ショックに思うことないじゃない。藤田君に彼女がいることは分かってたでしょ)


自分にイラつきながら溢れ出した涙を拭い去る。

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