ひょっとして…から始まる恋は
そして、間もなく挙式が始まりますとアナウンスがあり、披露宴会場のロビーに設置されたモニター画面には挙式の様子が映し出される。

参列者はほぼ親族のみで、友人の参列も限られているらしく、画面の中には久保田君の姿も見れなかった。


ウエディングマーチが流れだし、私はゴクン、と唾を飲み込む。
初めて見る藤田君の妻となるべき女性を見定めようとして、真剣な眼差しを送り続けた。


式場のドアが開き、並んで立つ新婦と父親が映し出される。

新婦は聞いていた通りに背の高い綺麗な女性で、脇に立つ父親も背が高く、二人揃って背中を真っ直ぐと伸ばしていた。

彼女はシフォンのベールで顔を覆い、そのふわりと広がったドレスの裾を持つのは可愛らしい男女の子供達。


フラワーシャワーが降り注いでいる中をゆっくりと歩む二人の横顔は神妙で、少し伏せられた眼差しにはうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。


そんな彼女を待っている藤田君は、神父様のいる祭壇の脇に立ち、白ではなくシルバーグレーのモーニングを着ている。

いつもはサラサラな髪の毛もカチッとワックスで纏めて、男っぽい雰囲気に仕上がっていた。

< 81 / 190 >

この作品をシェア

pagetop