ひょっとして…から始まる恋は
ひょっとして…から始まる恋は
久保田君に胸を借りて泣かせて貰ったお陰で、披露宴では涙の一滴もこぼさずに済んだ。

妙なくらいに清々しい気持ちで二人が灯すキャンドルの炎を見つめ、いつの日にか自分も同じ様に永遠の誓いが出来ればいいな…と思った。



涙あり笑いありの宴が終わり、私は新郎新婦と両家のご両親に見送られて会場を後にした。

挙式後に聞いた限りでは、久保田君は二次会の幹事を任されていて、披露宴後は何かと忙しい…と話していた。


結局、彼にはゆっくりとお礼も言えなかったなと反省しながらホテルを出て、叔父をタクシーに乗せた後は、一人トボトボと駅へ向いて歩く。

引き出物の袋をぶら下げて電車に揺られ、自宅の最寄駅で降り立った。



駅舎を出ると太陽は若干西に傾き始めていて、私はそれを見つめて眩しい…と声を漏らし、ゆっくりと足を前に進ませる。

遠目にあるコンビニを見てもただ懐かしい日々が思い出されるだけで、特に感傷にも浸らずに歩き続けた。


信号待ちで足を止めた際、少し寄り道をして帰ろうと決め、朝と同じく高校へと向かう。

その道すがらも気分は軽くて、鼻唄でも歌いたい気持ちになっていた。


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