花に美少年
プロローグ
厄介な出来事はいつだって突然やって来る。

例えば10年後に、結婚相手に浮気をされて泥沼離婚になる未来が待っていたとしても、それを前もって教えられることはない。きっとある日突然、知らない若い女から電話がかかってきて、衝撃の事実を告げられるのだ。

例えば5年後に、景気の悪化で突然リストラを言い渡されて、住んでいるアパートの家賃も払えないくらいの貧乏生活に突入する未来が待っていたとしても、それを事前に教えられることはない。きっとある日上司に呼ばれて、話が終わるころには私の手元には心ばかりの退職金と、使い続けたクレジットカードの請求書だけが残るのだ。

例えば1年後に、海外旅行先でパスポートとお財布を失くして路頭に迷う未来が待っていたとしても、誰も私にそのことを教えてはくれない。
例えば明日、大好きなイチゴのつぶつぶヨーグルトを食べてお腹を壊す未来が待っていたとしても、今の私がそれを知る方法はない。
例えば一時間後に、空から降ってきた隕石が私の頭に直撃して、23歳の若さで帰らぬ人になる未来が待っていたとしても、神様も仏様も、こっそり教えてくれたりはしない。

いつだって、起きたら困ることほど、突然やって来る。
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