【完】ホタル
第2話
「やだぁやだぁ!
 ママと一緒に寝るのー!」



「ママまだ仕事終わってないのよ。
 夏菜いい子だから先に寝てて。」



「やだやだやだぁ!!」



「はぁ……。
 お母さん、ちょっと夏菜見てて。」



「夏菜ちゃん、おばあちゃんと
 一緒に寝ましょうね。
 あんたも仕事ばっかじゃなくて
 ちゃんと夏菜ちゃんのお世話……」



「分かってるわよ。
 でも今大事な時期なのよ。」



あれは、私がまだ小学生の時。
お母さんは仕事が軌道に乗ってきたばかりで。
忙しくてろくにかまってもらえなかったことを覚えている。



「おばあちゃんお手洗い行ってくるからちょっと待っててねえ。」



そう言われて寝室で一人にされて。
畳の匂い。障子の隙間からこぼれる月あかり。


大きな部屋にぽつんと一人きり。
天井のシミが。
昼間は怖くないのに今はとても怖い。



「怖い……怖いよ……。」



おばあちゃんはやく帰ってきて……。
助けて、怖いよ。
怯えて縮こまっている時、



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