プレス発表会当日、私は朝から紺色のツイードのスーツを身に纏って出勤した。
ただの一般職、アシスタントの私は、郡司さんが企画した広告の発表会にも出席したことはない。
今回の出席は草稿立案のお勉強が目的。
つまり、今後のステップアップのためだと考え、私は朝からそわそわしていた。


しかも、会場が忍が勤務していたホテルの宴会場だと知り、私は無駄に緊張感を募らせた。
今、忍がいないのはわかっていても、郡司さんが受付を済ませる横で、ついきょろきょろと辺りに視線を走らせてしまう。


肩に力を込めて頬を紅潮させている私に、郡司さんは訝しげな視線を送ってきた。
けれど、昨日の言い合いの後だ。
ホテルまでのタクシーでも、私はずっと窓の外に目を遣り、『話しかけるなオーラ』を発し続けていた。
郡司さんの方も呆れ果てた様子で、一言も声をかけては来なかった。


とは言え、私も会場を前にして、大きく深呼吸をして気持ちを入れ替えた。
昨日の郡司さんの失礼極まりない言い草は許せないし、彼がどういうつもりなのかわからずイライラも治まらないけれど、これから始まる発表会は私にとって大事な仕事。
郡司さんがそのために計らってくれたことはわかってるし、ちゃんと感謝している。