恋し、挑みし、闘へ乙女
梅大路家の一日
「お嬢様、お支度はできましたか?」

部屋を覗いたミミは目を見張り、声を上げる!

「カッコイイ! あっ……じゃなくて、何て格好をしているのですか! 乗馬の授業は午後ですよ!」

「だって」と言いながら乙女は鏡に向かいポーズを取る。

「このスタイルが一番楽で好きなんだもの」

梅大路邸に来て早一週間、されど一週間。乙女は近年稀に見ぬハードな日々を送っていた。

――とは言うものの、綾鷹の計らいだろう、特別なことがない限り五時以降は自由の身だった。故に執筆の方も順調に書き進められていた。

「惚れた弱みかもしれませんが」とミミが乙女をチラリと見る。

「綾鷹様は乙女様に甘すぎます! 小説のことだって禁止なされたらいいものを!」

ミミはそれがどうにも気に食わないようだ。

「あら、そんなことをされたら、速攻で実家に戻ります」
「と、おっしゃったのですね! なるほど!」

どうりで、とミミは納得したとばかりに怒り出す。

「綾鷹様からお聞きしましたよ! やはりあの出版社は国家親衛隊に目を付けられていると言うじゃありませんか!」

やばっ! 顔を顰めた乙女は、このままでは分が悪いと思い「着替えてきます」とそそくさとドレスルームに飛び込む。
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