腰砕けって、こういうことをいうのだろうか。

「凱莉さんのバカ……。仕事行けないじゃない……」

歩けば抜けそうになる腰を撫でながら、私は一人で憎々しく呟く。

凱莉さんとの思いがけない一夜に、私の身体はすっかり悲鳴を上げていた。

洗面所の鏡に映る私の顔は、昨日の私と何一つ変わらない。

けれど。

私のルームウエアの下には、確かに昨日はなかった赤い痕が散りばめられている。

凱莉さんが求めてくれた自分の身体が愛おしくて。

私は朝から何度もその痕をなぞった。

けれど出勤時間が近づくにつれて、私は次第に怖くなる。

私は凱莉さんのことが好きで、求められて抱かれたことに後悔はない。

では凱莉さんは……?

凱莉さんはいったいどういうつもりで私を抱いたのだろうか。

その場の雰囲気に流されてのことだったのかもしれない。

男の人は心ではなくて身体さえ反応すれば女を抱けると聞いたことがある。

凱莉さんが不誠実な男性だとは思わないが、私に本気になってくれたとも思えない。

だったらいったい昨日の出来事は何だったんだろう。

私はいったい、どんな顔をして凱莉さんに会えばいいのだろう。

考えれば考えるほど混乱してしまうので、私は勢いに任せて家を出た。