チラリと周りを見ると、同じ課の皆がはにかむように笑っていた。

平嶋課長も周りの表情には気付いているはずなのに、全く気にならないのか、いたって普通に仕事をしている。

週末とは違う空気感だ。

一日で何が変わってしまったのだろうか。

「平嶋課長、昨日は可愛かったんですよ」

何かを思い出したかのように含み笑いをする瑠衣ちゃんは、平嶋課長に聞こえないようにこっそりと小声で私に囁いた。

「可愛かったの?あの平嶋課長が?」

「そうなんです。紗月さんが千尋さんが熱で大変だって話を盛ったら、わたわたしちゃって。紗月さんから簡単に遊ばれてましたよ」

笑いをこらえきれなくなった瑠衣ちゃんは、ぷぷっと小さく吹き出しながら口元を両手で覆った。

「平嶋課長があんなふうに焦る姿を見れる日が来るなんて思ってもみませんでした。初めて平嶋課長をいじれて楽しかったです。めちゃめちゃ親近感湧きました」

「嘘でしょ……」

平嶋課長ともあろう人が、瑠衣ちゃんにいじられるなんて想像もできない。

それだけ私のことを心配してくれたと思ってもいいのだろうか。

「よっぽど千尋さんのことが心配だったんですね。平嶋課長は本当に千尋さんのことが好きなんだなぁって感じました」

平嶋課長が思わず凱莉さんになってしまうくらい思ってくれたの?

本当に?

瑠衣ちゃんの言葉では実感できなくて、私は凱莉さんへと視線を向ける。

ふと視線が絡むと、あろうことか凱莉さんは私に緩い笑顔を向けてくれた。

そこにはもう平嶋課長の姿はなく、どこをどう見ても凱莉さんだった。